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2017.07.23 (Sun)

メタ認知修行

 20代女性に仕事のことを尋ねてみたところ、
「職場は男性が多くて、働きやすい環境です」
 ともし言われたとしたら、どういう感じがします?
 なんとも思わず聞き流す人が多いかな?
 私は、一瞬もないくらいの短い時間ではありましたが「は?」と思いました。

 無意識の思い込みってこういうもんだわなー、と、ちょっと面白かったというお話。

 日経新聞土曜版、いろいろな話題のコラムが多くてけっこう好きですが(生活実用一般の話題が多い)、その中に人生相談コーナー、「なやみのとびら」があります。
 回答者は何人かいらっしゃいますが、今回は脚本家の大石静さん。

 相談者は、上記にもちょっと書いた通りで20代女性、仕事が生きがい、とおっしゃる。
「働きやすい環境で感謝しているが、自分以外に女性社員が3人いて、いつも2:1で対立し、陰で悪口を言い合っている」
「自分は悪口を言わない主義」
「我慢しているがさすがにうんざり。でも全員自分より年上(50歳代以上)なので口答えできない」
「どういう心持ちでいればいいのか」

 悪口を言わない主義というのはけっこうですが、悪口を言わない主義ならこんなことを書く必要もないんじゃないの? というのが私の最初の印象。
 と思ったら、回答者の大石さんのお答えもほぼ同じでちょっと笑ってしまいました。

「どういう心持ちでというなら、聞き流していればいいでしょう、働きやすい環境であるならそれで十分ではないか」
 そうおっしゃって、返す刀で、
「確かに、悪口ばかり言う先輩は褒められたものではないが、あなたの質問の裏には、『自分は若く、悪口を決して言わない人間だが、(御年配の)先輩たちはなってない』という『蔑み』があるように思う」
「それはすでに悪口ではないか?」

 私は悪口を言わない「立派な」人で、先輩方ははるか年長者なのになってないよね、と言う、「蔑み」があると感じられて、私(=大石さん)はちょっと寂しいです、と。

 ですねえ。(^^;)

 私も可能なかぎり悪口は言わないように、そして「聞かないように」という気でいるので、質問者さんのお考えには同意なのですが、悪口ばかりの人についてはそんなに「執着しない」んですよね。
 そこであの人たちは悪口ばかりだ、イヤダイヤダと思うのも、「執着」。心をそこに寄せている状態。

 あーまた始まった、と思ったらにっこり笑って何も言わず、その場を離れる、というのが、私の「心持ち」と申せましょうか。
 どうしたらいいでしょうなんて考えたことはないので、へー、と思って読んでました。

 私が引っかかったのはむしろそこではなく、「職場は男性が多く、周りのみんなもいい人です。働きやすい環境だと感謝しています(記事原文)」のところ。
 これだけならまあ気にしなかったと思いますが、続けてきたのが「女性社員が私の他に3人いるのですが…」。

 この言い方の「裏」には、「男性はカラッとしていて付き合いやすいが、女性は陰湿」という、ステレオタイプがある、と感じるんですよね。
 ステレオタイプというのは「紋切り型」「固定イメージ」とでも申しましょうか。日本人といったら出っ歯でカメラを首からぶら下げている、というのが外国におけるイメージとして出てきますが(最近はそうでもないのかな)、例えばああいうのですね。

 あたしゃ男性の方が陰湿だなあと思うことが多いですよ(笑) 「なさそうであるのが男の嫉妬」なんていうの、「あるだろうとは思っちゃいたが予想を超えてひどかった男の嫉妬」と言いたいものを見てきましたんで。

 つまるところはその人個人の人間性であり、男だからこう、女だったらこうというのは「思い込み」であり、「固定イメージ」に過ぎません。
 イメージはイメージであって「実態」ではない。

 あと、人間の面白いところで、自分の好き嫌いに「合わせたように」事象は起こる、ということ。
 私は男嫌いの女好きですから、男性の嫌な面の方が気になるし、女性の良い面ばかりに目がいく。
 私の亡父は逆で、女嫌いとまでは言いませんがそれに近いところがあり、——全く同じ場所で同じものを目撃したのに、私と父とでは、感想も、その事件の解釈も何も、正反対ということはよくありました。

 自分の好き嫌いや思い込みのフィルターによって、同じものを見ても聞いても、解釈も感想も、まるで違ってきます。

 私は、この質問の場合、「男性が多くて、働きやすい環境で」というのは、は? だったのです。
 男性が多いことと、働きやすい環境、というのは、私の脳内では何の結びつきもありません。
 何だそりゃ? と、うっすら思ううちに質問が展開され、「あー……ステレオタイプだこれ」と思った次第。

 でも、こういうもんなんですよね、人の意識って。

 常識とか既成概念とか固定観念というのは、こういうものです。

 で、こういう人に、かくかくしかじかで、あなたそれはそういう思い込みですね、というと、まあひとまずはびっくりされますね。
 驚いて、そうなのかと考え込む人はまだ柔軟性のある人。
 固定観念が強烈な人は、そこで怒り出します。自分の「安全」が脅かされたように感じるようです。
 足元にあった地面が崩壊するような危機感を覚える——その感覚はわかる。私はもう何度も足元が崩壊しているので。(^^;)

 でも、崩壊するのは自分の思い込みであって、本当に地球が割れるわけじゃないから死にやしません(笑) 大丈夫。

 悪口を言わないという志は立派。その気持ちはそのままに、自分の思い込みをひとつ破壊できたら、自分はもっと身軽になれる。

 私は悪口は言いませんと言いながら、悪口を言う人の悪口になっている質問者さんへの、大石さんのアドバイス。
「そういうことを自覚できないと、あなたはいずれ先輩と似たような、あるいはそれ以上にしょうもない50代になってしまうかもしれませんよ」
「自己分析ができない人間は、他人も理解できず、思いやりも持てず、結局、人間関係において損をすると、私は思います」
「どうか、文句を言う前に、もう少し、自分の感情や行動を分析してみてください」

 ……つまらないセッキョーだとしか思ってもらえないかなあ。でも、私も同意見です。

 自分がどんな思い込みを持っているかはなかなか自覚できないし、好き嫌いですら、どこにあるのか、自覚するのは難しいもの。
 知性とは「メタ認知」である、と言った人がありましたが、「自己分析」が、そのメタ認知だと申せましょうね。自分を、他人の目で見る。なかなかたやすいことではありませんが、でもそれはだんだん身についてくるし、いずれは自分を助けてくれる。

 あんな50代以上は嫌だなと思うのであれば、自分がそうはならないように、自分にこそ、冷静な目を向けておくのがよろしいのでしょう。

 なんて言ってますが、これがもーどんだけ難しいことか;;
 私の場合は、それだけが、実感として持っていると言えるもの。
 知性の「修行」は、死ぬまで完成しないだろうなあ、などと思っているところです。(^^;)
 
 
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タグ : 人間

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