一方を聞いて沙汰するな
2017年06月30日 (金) | 編集 |
 本日は6月のプレミアムフライデーでございます。
 あいにくのお天気となっているところが多いかと思いますが、時間の有効活用ができる方にはぜひそのようにお過ごしいただけますように。(-人-)

 なんでそんなにプレミアムフライデー応援なのかと申しますと、できる人からでいいから、早く上がれる人は上がること、定時で帰れる人はさっさと帰るのが当たり前という「空気」が発生することを——、早めに上がることに対する「罪悪感」があるという、この奇妙な「文化」が打破されることを、心の底から願っているからです。

 定時で帰って当たり前だし自分の仕事が終わってんのに「付き合いで」居残ってしかもサービス残業って意味わからん。定時で帰れるのに「罪悪感」がある、定時で帰る人を「妨害する」、「責める」というのはもっとわからん。
 そういう訳のわからない横並び意識、悪平等意識、無くしていきたい、と心から願っておりますので、プレミアムフライデーには、その空気醸成の効果を願う訳でございます。

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 NHK大河ドラマの「篤姫」で聞いた、印象深いセリフが脳内を駆け巡りましたよ。
「一方を聞いて沙汰するな」

 ことの起こりは、LCC(ローコストキャリア)、つまり格安航空会社の便を利用した、肢体不自由の方が、利用する飛行機に搭乗するにあたり、ご自分でタラップ(乗降用階段)を——足に障害があるとのことなので、『這い上がる』ことになった、という顛末。

 これだけポツンと聴くとずいぶんそのLCCの手落ちのようですし、聞いた瞬間「ひどい」と顔をしかめる人が多いかと存じます。

 が、これはそうでもない。公共交通機関は大勢の人が関わることですから、安全かつ円滑な運用、運行が「第一義」である、というのはその通り。
 その円滑な運航のためには乗客ひとりひとりにもまた、そのための努力、協力が要請されているんですよね。ふだん、あまり意識されないだけで。

 障害のある方でももちろんそのあたりは同様。事前連絡を入れておくなどの「協力」は、通常の乗客が搭乗手続きがスムーズに行くよう職員さんの指示に従うというのとなんら変わるものではない、と。

 よくよく考えればその通りなのに、「よくよく考えないと、思いつかない」ってところが、いかんのだろうなあ、と思いました次第で。

 この場合、この便を利用しようとした乗客と、航空会社側はそれぞれ、どういう対応が本来のものだったのか、それがどう今回は守られなかったのか、どこが問題だったのか、——を、丁寧に説明してくださっているものがありまして。

車いすで飛行機に乗る時は
 2017.06.29 Thursday いすみ鉄道社長ブログ
http://isumi.rail.shop-pro.jp/?eid=2918

 読めば、なるほどなあ、と納得です。

 思いますのに、どうも、最初に聞いたのはその乗客側からの発信だったし、マスコミがわっと食いついたのもそちら側ばかりで、きちんと航空会社側の事情を伝えたものはなかった。
 こんなときばっかり食いついてくんのな、と思ったのにはBBCもありました。

日本の航空会社、車いすの男性を自力で搭乗させる
2017年06月29日 BBC JAPAN NEWS
http://www.bbc.com/japanese/40439777

 あえて露骨に扇情的に書いているようには見えなくても、結局は、航空会社側を「悪者」と決めつけて、「ひどい!」となるように仕組まれている記事が多かったようです。

 でも、第三者というのはこういうとき、そうも簡単にコーフンしてはいかんのだな、と思いましたね。
 航空機の運用に関する法律や義務については私どもはほとんど知らないはずですし、知らないことに対して勝手な憶測でものを言うのは、いろんなものを誤らせる元です。

 聞いた瞬間には「ひでえな」という印象があったとしても、「自分は、でも、”本当のところ”については何も知らない、第三者にすぎない」ということは、わきまえておくべきでしょうね。
 そうじゃないとモンスタークレイマーの、御先棒をかつぐこともあり得る。そんなの嫌でしょう。
(モンスタークレイマーというのはたとえであって、今回の乗客のことではありませんので念のため)
(よく知りもしない、無関係者が、勝手な妄想でものを言うと、そうなる危険性が高いよって話)

 篤姫で印象深いのは、そういうわけで、そのセリフ——「一方を聞いて沙汰するな」。
 何か問題が起きたとき、当事者の片方だけ、あるいは誰か一人だけの話を聞いて、判断してはいけない、ということですね。

 それぞれの立場でそれぞれの人に、事情も言い分もある。それらを公平に聞いて、「全体を見て」考え、判断する。その必要性と、そうしなかった時の危険性を、端的に表した言葉だと思います。
 ドラマ中で聞いたときは「うーん。ごもっとも」と思いました。

 篤姫さんのように「エライ」人で、何かと人を判断しなければならない立場だと、実際、本当に慎重にする必要があったでしょうね。
 一度下した裁定を覆すのは難しいこともあるし、訂正したとしても、もう取り返しのつかないものが、何かしら出てくるはず。

 篤姫ほど重要な地位にはいないからって油断してはいけません。
 やはり、大勢の人がヒステリーを起こせば、たとえそのヒステリーの内容が全く誤ったものであるとしても、大勢、というのはすでに「暴力」ですから、これもまた人を殺す危険性を持っている、ということを考えておく必要がある。

 この話を聞いて、「ひどい!」と、カーッと感情的になった人の多くは、何かと不自由な思いをなさる方に同情心を持つ、おやさしい方なのだろうと思いますが、でも、それでも、集団になったときの暴力性を考えて、「詳細を知るまでは判断しない」という態度が、まず望ましかったのではないでしょうか。

 いすみ鉄道社長さんのブログは、そういうわけで、「双方を聞いて沙汰する」ものであり、ありがたいお手本ですね。
 私などは飛行機なぞ両手の指を折って数えられるくらいしか利用したことないので、その運用ルール等については何も知らない状態。詳しい説明が、ありがたいことでした。

 最近、ファクトチェックなんてことがアメリカさんでは言われているようですが、マスコミにおいては、——まあここまで丁寧なことを調べるのは時間の都合で難しいのはわかりますが、せめて、勝手に沙汰しない、という態度を、お願いしたいと思います。

 と同時に——それは、私ども一般の「無関係者」も同じですよね。

 あのドラマを見ているときにも、なるほどと思って聞いたけど、「一方を聞いて沙汰するな」は、1日に10回くらいは思い出し、確認していいことだろうな、と、あらためて思ったり。

 やはりここでも、「ひどい!」という、感情に振り回されてはいけない、ということが言える。
 そのように思います。
 
 
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