暗黙のルールの明文化
2017年05月02日 (火) | 編集 |
 何か特に偏見があって嫌っていたということはまったくありませんが、でも、幼少の砌よりここまで、音楽ジャンルの中でもロックというものにはおよそ縁なくきてしまいました。
 ゆえに、あのライブのようすというのを知り始めたときというのはなかなかのカルチャーショック。
 一体これはナニ? と、口あんぐりでDVDやら動画サイトやらをみていたんでした。

 私と同じようにロックのライブなどと言われてもわからない方のために申しますと、ライブで熱狂した観客が盛り上がって「激しいおしくらまんじゅう」が巻き起こることがあり、このおしくらまんじゅうを「モッシュ mosh」というそうです。

 ただおしくらまんじゅうというだけではなくて他にも「暴れ方」があるようですが、……まあ、楽しいんだったら他人が口を挟むことじゃないけど……、音楽なんだから音楽聞けば? と思うくらいの光景が繰り広げられるわけですね。
 ファンの方にはあれが楽しいんだから、部外者には何もいう権利はありません。(^^;)

 熱狂した大勢の人が暴れるということは、まあ、どうしても、怪我の危険性がゼロってわけにはいかない。
 私から見るとなかなかの地獄絵図に見えるモッシュ各種も、ファンの方にはちゃんとした「文脈」があり、決して、支離滅裂のものではないんですね。

 それでも、大勢の人が集まれば、「わかってない」ひとも混ざってきて、「規律」を乱す、迷惑をかけるというのは、これはもう、なんの業界でも職種でもあること。

とあるライブでダイバーに鼻を蹴られて骨折した人のツイートで、マナーの悪さや実際にケガした人などの声が多数集まる
https://togetter.com/li/1101930

 いつからこんなにマナーが悪くなったんだろう、というお嘆きもごもっともですが、でも、ああいうものにマナーなんてあるんですかと思わず部外者は思ってしまいます。そのままそう言ったら間違いなく張っ倒されるわ、と思いつつ。(^^;)
「マナー」というのは、これはテーブルマナーというのと全く同じで、マナーの「正体」は「暗黙の了解」なんですよね。

 誰がいつ決めたことともわからないながら、それでも、多くの人に「こういう時はこうする」「この場合はこれはやってはダメ」と、ゆるいルール、あるいは「常識」として共有されている。

 それを承知の上で破ってくるやつは論外としても、でも、初心者、という人々は存在するわけで。
 明文化されていない、ルールブックもあるわけじゃない、そういう「常識」があることさえ、初心者は知らない。だから初心者なんですが。
 こういう「何も知らない」「自分が、何を知らないのかさえ知らない」でいる人に対して、いきなり熟練者と同じ知識や練度や「常識」を求め、髪が長いなら縛れだの、バッグは預けてくるのが「当たり前」だろうだの、……あとなんだっけかな、まあ、そんな感じで「怒ってる」のも、どうなのかと。

 マナーでも暗黙の了解でもなんでもいいけれど、大勢の人が集まったときに、なんらかの「決まりごと」は必要。だから自然発生してくる。
 ずーっと同じ顔ぶれの集まりが続いていくなら、暗黙の了解は暗黙のままでもいいでしょう。同じ顔ぶれの「グループ」の中では、それが暗黙の了解とすら認識されないまま、存在していることさえある。

 でも、新しい人というのはやってくる。
 やってこない場合はいずれその何かは衰退していくだけなので、それはまた別の問題となるでしょうが、長く続いていくなら、新しい人は現れる。
 そういう人に、「暗黙の了解」を、暗黙のうちに理解せよというのは、無理がありすぎじゃないでしょうか。

 長いことファンをしてきた人々が、新しくきた人を「ニワカ」と呼んで嫌うというのはどこのジャンルでもあることですが(私としてはフィギュアスケート、羽生結弦選手の人気前後のコレが印象深いです)、でも、そりゃあさ——何も知らない人にいきなり何もかも理解しろというのは、どうかと思いますよ。

 競技のルールなら、ルールブックを紹介できる。
 でも、不特定多数の人々の間に「いつの間にか」「暗黙のうちに」醸成されたものって、きちんとした言葉で明示してくれるものは、ないですよね。

 これは初心者側が、その辺を自覚して、初心者だからということで、そろり、こっそり、柱の陰から見学する、というところから始められればいいのでしょうが、ライブ、コンサートでの「暗黙のルール」は、それも難しい。

 古参の方々も、黙って怒ってないで、初心者が必ず混ざっているものと考えて、「教えてあげる」心づもりでいてくださるといいんじゃないかと思いますね。

 あとは——まあ、無粋で野暮で嫌だと言われるでしょうが、こういう「暗黙の了解」があるということを明確に示すことも、必要かなと思います。
 
 そういう情報を出したときに「こんど初めて参戦するので、こういうことを教えてもらえると助かります」という声は多いですし、そういうことを言う人にきちんと情報を与えておけば無闇なことにはならないと思うんですよね。

 本当にどうしようもない人というのは、そもそも、「初参戦だけど、どうしたらいいのかな」とすら思わない。自分の好きなように振る舞うだけでしょう。

 初心者の中でも、そういう振る舞いの人より、「どうしたらいいか知りたい」と求める人の方が多いでしょうし、後者の人が、十分ではなくてもそのルールを「引き継いで」くれれば、そうは困った事態にはならない——なりにくい、のではないかと考えます。

 ルールというと「上」から押し付けられるものというイメージがあるのかもしれませんが、実際にはルールは、人間が人間として生きる上では「必須」のもの。
 だから、誰も何も言っていないはずなのに、それでも「自然発生」する。
「暗黙のルール」が作られていく。

 いつまでも古参の、あるいはお馴染みの方々ばかりで行うなら、こんな問題もすれ違いも発生しないと思いますが——。

 大勢の人が集まる、というのは、私からすればそれは基本的には「恐ろしいこと」です。
 ただでさえ「おっかない」のに、その人たちが暴れまくるとなれば、何も起こらない方が奇跡。
 そういう目で見ている「部外者」としては、
「初心者にもちゃんと説明してやれば違ってくるんじゃないかな」
「無言で察しろ、は、まず通じまい」
 ——そう思って見ております。

 で、そのモッシュ各種には反対しないのか、というと、しません。
 楽しいとか好きとかっていうのはもう、他人がどうこうできることじゃないし、口を挟むべきことでもない。

 それで魂が活性化するくらい楽しいなら、どうぞおやんなさい、としか、言えませんよね。
 そこまで楽しいこと好きなことって、そう多くはない。そういうものは大事にしなきゃ。
 禁止は求めない、というのを大前提にしたうえで、何かいい知恵があるといいんだけどな……と思って拝見しています。


 なんにしても、今回引用させていただきましたツイッターの「まとめ」の、負傷なさった方にはお見舞い申し上げます。
 またいつか、お好きなライブを心から楽しめる日が来るよう、心身ともにそのご快癒をお祈りいたします。


 危ないから危険だからと言って、幼い子供から何もかもを取り上げることに賛成しかねるのと同じに、危険だからと言って「全て」禁止ということには、私も、部外者ながら、賛成はいたしかねます。

 好きなこととか楽しいことは大事にしてほしいと思います。
 それが他人から見たらどれほどバカなことでも、本人が楽しいというのなら、それはお互いに守り合っていくべきもの。

 ——オタクは大抵、自分の好きを抑圧された体験を多かれ少なかれ持っていますから、こういうあたりにはつい、切実になって反応してしまうのです(笑)
 
(「まとめ」の最後に、そのライブの、バンドの方のツイートも紹介されていまして、本当にそうですよね……としみじみ……)
 
 
関連記事