はるかな国の花や小鳥
 まあいろいろあってすっかり変貌してしまい、かなり変則的になっている「日本の」バレンタインデー。
 これが男女双方から聞き苦しいグチと恨み言が出てくるのが、私は個人的に嫌で、女性に向かっては、基本的には「嫌なら参加しなきゃいいだろう」と言ってますが(でもグチグチいう奴に限って、自ら不参加とする度胸もないんですよね)、参加しなきゃいいだろうでは片付かないのが男性側のグチ。

 聞き苦しいったらないのでいちいち書きませんが、いじましいんですよねこういうと何ですけど。
 
 とはいえ、この変則的な日本のバレンタインデーの場合、男性は「待つ」立場にある。
 待つというのもストレスの多いもので、そのへんからだんだんいじけてねじれていく気持ちは、よくわかる。

 ということで、毎年、しつこくオススメしているのが「逆チョコ」です。

 待っているからストレスになるのであって、だったら自分から攻めていけばいいでしょう、ということ。
 実際、オリジナルのバレンタインデーは、男女どちらとは決まってないそうだし、というより、友人でも家族でもとにかく愛情の対象であればいいわけ。

 義理チョコって不当にバカにされている、と思うのもこの辺が理由で、いーじゃないか義理だって「日頃お世話になってます」の意味があるんだから広く取ればこれだって愛情じゃないですか。それを何の価値もないかのようにいうのはまことに持って失礼かつ罰当たりだと思うのです。

 そもそも日本人の多くは自分からの愛情表現には慣れてないというより、その経験自体が少ない。ゆえに、愛情表現すること自体がいかに楽しくて豊かなことかを知らない。
 知らないくせに、自分がやってもみないくせに、御託(ごたく)を並べて愚痴ばかり。
 それじゃあモテるモテない以前の問題でしょうよ、と。
 
 十万人から愛されるよりも、自分が全身全霊かけて愛せる人が、たった一人いること——を、ずいぶん無謀な夢としたことがありましたが、でも、そういうもんじゃないのかなあ。本質的には。

 そこまでハードルを上げずとも、でも、「自分から」「自分が愛している」家族に、友人に、お世話になるだれかれに、カードの1枚でも贈ればいい。
 こればっかりは、自分でやってみないとわからないことなんですよねえ。自分から表現する、ということの幸福感は。

 そもそも逆チョコというのは、これまでの女性がチョコを贈るものという状況を前提としている言葉だから、私としては、本音を言えばイマイチの言葉。
 こんなことに、正も逆もない。他人の顔色を見てないで、自分が、自分の、好きだなあありがたいなあという思いに従う——そうであってもらいたい。

 こんなことを言うのも何を隠そう、自分の経験から。
 べつにあえてけち臭いことを言っていたつもりもないんですが、でも実際に、自分から、どうぞと手渡したときの気持ちというのは、これはもう、経験するしかないことだな、と思いました。

 愛することは豊かなことですと言われても、自分はモテないというヒガミで凝り固まった心は受け入れ難いのでしょうが(経験者は語る)、でも、何かの間違いでもいいから一度やってごらんなさい、と、しつこいと言われようが何と言われようが、あたしゃ言い止めませんからね。

 このことを考えるといつも思い出すことがあって。

 少女漫画の金字塔、萩尾望都さんの「ポーの一族」。
 これは短編中篇が集まった作品になるんですが、その中に、「はるかな国の花や小鳥」という掌編がありまして。
 そこに登場するセリフで、好きなものがあって。

「花を受け取ってくれる人がいるのは いいわ」



 たとえ、自分が望むようには受け取ってもらえないとしても、それでも、花を贈ろうと思える人がいる。
 そのこと自体が、すでに豊かなこと。
 きれいに咲く花を見て、あの花をあの人に、と思える、そういう人がいる。

 これはお金では買えないことだし、仮に十万人から「モテている」としても、実現しない時には実現しないことなんですよね。

 これを言ったら昔、とある男子には、
「十万人もいたら、その中にひとりくらいはいるだろ」
 と言われましたが、
「それはまあ、気の多いオマエならそうだろうな(一般に、女性より男性の方が”博愛”だそうですし)」
 と答えて本気でムッとされました(笑)
 でも、ほんとよ——いないときは、本当に、いないよ。

 それを思うと、あの花を、あの人に、と思えるのは、奇跡。
 
 花を見ても誰のことも思い出せないのは——それはそれで仕方ないことで、そういうときは素直に花を愛でていればいいんですが(これはこれで幸せだし)(経験者は語る・再び)、でも、誰かの顔が思い浮かぶのは幸せなこと。

 そのあたりを静かに語るセリフで、好きな場面です。
 
 
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