代替的事実
 オルタナティヴ alternative の意味と、その意味が変化してきた歴史についても解説しているので、一番わかりやすいと思われたのは、ウォール・ストリートジャーナルのこちらの記事。

トランプ政権の「事実」と「代替的事実」
新政権が生んだバズワードはSNSでも話題に

2017 年 1 月 27 日 12:59 JST By BEN ZIMMER for WJS

 その就任式にどれほどの人数が参加したか、という件について、報道では、オバマ大統領の就任式より少なかったと伝えまして。
 それに対して、トランプ大統領は「怒って」反論してきたわけですね。就任式後の記者会見で、スパイサー報道官が、史上最大の聴衆の数だったと「発表」。質問は受けなかった。
  
 その後、実際の写真を引っ張り出して見てみれば……、まあそりゃ写真ですからこのご時世、加工することは不可能じゃないですが、それはそれとして、確かに、目で見てわかるほどの空間が空いてました。
 少なくとも「史上最大」ではないのは見りゃわかること。

 なぜ、これほど頭のいい人たちが揃っているのに、すぐにバレるような嘘を言うのか不思議にも思いますが、トランプ陣営の中でもトップと言える「上級顧問」のコンウェイ氏は嘘だとは言わず、「代替的事実」だと言ったとのこと。
 
 代替的事実、原語では alternative facts。
 alternative の意味は、上記記事の中にあるのでご覧いただくことにして。

「事実の代わりの事実」ってなんですのん。——と思いますよね。
 つまりそれは事実ではない。代替的事実という言葉自体は、20世紀初期には、SF作家が多く使った言葉だそうで、案外、歴史はある言葉なんですね。
 SF作家がいう代替的事実とは、作家が描いている空想世界のこと。

 ……つまりは「フィクション(虚構)」であり(SFはScience Fiction)、虚構というのは、簡単に言えば「嘘」のことですね。

 嘘という言葉は使わなかったが、嘘だということは、コンウェイ氏も認めたことになるはずですが、そういう話にはなっておらず、あくまでも「代替的事実」だと言い張り、「自分たちが代替的事実を持ち出す羽目になったのは、メディアが事実を言ったからだ」と聞こえることを言っている、ってあたりが、うわ、すごいね(いろんな意味で)、と興味深く。

 IQ高い人たちが揃ってるのになあ……。なんでこんなことを言うのかな。私の友人がその昔、ある人の頭のキレ具合に感心するのを通り越し、なかば呆れたように
「〇〇さんてバカみたいに頭いいよね!」
 と言ったことを思い出す(笑) バカみたいに頭いいってアンタね(笑)

 でも、そんな感じはするなあ。——個人的にはこのスパイサー報道官には今後も注目したいと思います。他の報道官もいるんでしょうが、まずはね。
 クリントン大統領のときの広報(担当大統領補佐官)を務めていた、ステファノプロスさんみたいになるかな? という、そんな興味なので、ちょっとヨコシマですすみません。(^^ゞ

 ただ、この代替的事実は、私どもも日常でやってることだよなあ、と思ったら、なんとなくしんみりしてしまいまして。

 事実というのは難しい。芥川龍之介の「藪の中」(映画じゃなくて原作の方)はそのへん的確だなあと思うんですが、同じものを同時に見ていたはずなのに、「解釈」によってぜんぜん違ってしまう。一体どれが「事実」だと思えばいいのか、という。

 事実というのは揺らぐもの。だから、私どもは無意識に「自分にとって都合のいい事実」を選ぶ。
 それは本人にしたら事実だけど、他人から見れば嘘にも等しい。

 そういうことは日常、あります。

 誰が見ても、まあ間違いないねと言えるものって、ものすごく小さい、狭い、ほんの少しのことしかない。
 自分にとって都合が悪いことでも、認めていけるかどうか。

 自分にとって都合が悪いことでも、そのまま、それが事実であり現実ならばと受け入れないと、その現実に即した、「適切な」対応はできないし、適切な対応がなければ、問題解決も、自分の成長もない。

 演技性人格障害というものがありますが、多くの人にも、この演技性人格障害みたいな、「自分にとって都合のいい事実=ウソ」を、認められないあまりに、それを事実だと信じ込む、という、そういうことってやらかしてしまう。

 そういう自分を、他人の目で客観視する——今、自分は、どんなことをどんな風に「信じ込んで」いるのかを検証することって、やはり必要なことだと思いますね。
 メタ認知、というそうですが、これが、知性といわれるものの存在価値なんでしょう。

 その知性の働きが十分ではないと思われる人を見て、「動物的(悪い意味で)」と感じるわけだな——と思いつつ、この記事を拝読。

 人のことを言ってる場合じゃない、自分がどんな「代替的事実」を持ち込んでいるのか、考えた方がいいなとも、思っております。

 ……とはいえ、嘘を嘘ともいわず、代替的事実を事実だと言い張るのは、どのみち感心しませんね。

 こういうことってIQとも学歴とも関係しないらしい。
 頭がいいことと、知性的であることが一致しないというのも人間の面白いところかな。
  
 
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