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料理は愛情を以って真とする

 ——「料理は愛情(が大事)である」。
 この命題は、真か偽か?

 愛情が詰まっているので料理が美味しい、というのはひとつの思い込みで、愛情をかけていようがいまいが、うまいまずいは調理の腕前しかないではないか。——という、事実といえば事実、ドライといえばドライな見解もございます。

 まあ、それはそうですよね。いかに料理をする人が、食べる人に対しての愛情があって、その思いを込めつつ調理したって、技術的に問題がある場合、あるいは味覚のズレがあまりにも大きい場合などは、愛があってもチョットねえ、ということになります。これは当然。

 とはいえ。
 今はそういうのも減っているかもしれませんが、むかーしは、やはりああいうお店の厨房などは見るものではない、という感じでしたね。私も実際、そんなふうに聞かされたことがあります。

 わずかな手順や時間の狂いが「商品」をダメにしてしまう。厨房は戦場であり、それゆえに、凄まじい罵言や怒号が飛び交う場所なのだ。
 だから、客は、厨房やその付近になどやたら近づくものではない、と。
 そんな話を聞かされて、わあ、やだなあ、と、子ども心に思った記憶がございます。

 栗本薫さんの(…あ。あれは中島梓名義だったか)のエッセイで、レストランで食事をしていたら、厨房の方から人が怒鳴りまくる声が聞こえてきて、食事どころじゃない感じになり、もう料理が美味しいなんて思えなくなったというお話もありました。
 もうそういう店には二度といかなくなる。

 そういうもんだろうなと思います。はい。

 土井善晴先生はしかし、そんなところで作られたものには「痛みとしか言えない雑味が必ず見つかる」とおっしゃる。



 私などは迂闊な人間なので、そういう劣悪な環境下で調理されたものでも、黙って出されたらわからないかもしれませんね。
 でも、敏感な人ならそういう「雑味」に気づくということはあるんだろうな。
 人から怒鳴られて気持ちが良くなる人はまずいない。萎縮するし怒りも感じるだろうし、本来なら注意しなければいけないところから、怒鳴られている方へ意識が行かないわけはないので、どこか上の空になり、何か、細やかな仕事をとり落すだろうことは、想像できる。

 そう考えると「料理は愛情」とは、言えるでしょうね。
 これは「愛情を込めて作れば調理の腕前の未熟さをもカバーできる」ということではもちろんない。
 ただ、人を罵倒しながら何かをするなんてのは、調理をうんぬんする以前の問題だ、ということ。

 料理は愛情、というのは、そういう気持ちがあれば、作業も丁寧にやる気になるし、勉強しようという気持ちにもなるし、工夫しようという気持ちにもなるし、食材そのものにも感謝する気持ちにもなろうし——という、そういうことじゃないでしょうかね。

 忙しくて戦場状態になるだろうことは理解できるけれど、でも、人を罵倒しながらだなんて、そんなことならテメエひとりで作業してろ、ってことになりますね。

 でもそういう、平気で他人を罵倒「できる」人って、自分ひとりで作業しているときですら、何かにつけてぶーたれていそうですよね(笑) 古典落語の、小言幸兵衛さんのもっと激しいバージョンて感じで。

 私は料理を始めるとそちらに意識が集中してしまい、人から話しかけられても返事もしないということが多いようです。(……って母に言われる)
 無視しているわけでもないし怒っているわけでも(当然)ない。ただただ、作業に没頭して気がついていないだけ、ということで。
 余裕がないってことなんでしょうねえ……。基本的に料理上手というタイプじゃないし。
 自分であれこれ「遊ぶ」のは好きですが、上手、器用、ではない。絶対に。
 自分で料理をするようになったとき、テレビ番組で先生方があれこれ喋りながら番組を進めているって、あれはすごいわ……! と、尊敬の念を覚えましたよ。(^^;)

 食べるものはその人の身体になっていくもの。殊更に愛情がどうこういう必要はないけど、罵倒、怒りという「毒」を盛るのだけはカンベンして欲しいですよね。

 で、冒頭に戻って「料理は愛情。この命題は真か偽か?」。
 私は「真」としたいと思います。
 まあ、ある意味、命題にしなきゃいかんような、悩むべき問題では、本来はない、と思いますけども。(^^;)
 人の身体を作るために料理を作って食べてるんですから、毒を盛ってどーすんのよそんなの論外としか言いようがないでしょ。ってことで。

 ちなみに、土井善晴先生のツイートの話題のきっかけはある映画。
 このツイートは、先生のお考えが(映画に触発されて)閃いた、というだけのことでしょう。

 リプの中に、その映画を土井先生がディスったと解釈しているらしい、あさっての方向からの非難が来てますが………別に映画そのものについてのツイートじゃないのにな? このかた、映画の関係者なのかな? と思ったり。
(そんなわけないか;;)

 映画の方は、「二ツ星の料理人」というもののようです。

映画「二ツ星の料理人
映画.com 特集記事より

 日常の「褻」としての家庭料理と、ビジネスである「外食」とは、正確には「似て非なる」ものと考えるべきかとは思います。
 でもまあ、——口から入って血肉になっていくものだ、ということにはかわりないわけなので、愛情をとまでは言わないけど、毒を盛るのはやめてね、と思います。
 結構な金額払って毒を口にするって、なかなか大変なことですわ、考えてみれば。
 
 
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