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2016.07.06 (Wed)

信頼感あればこそ


 ということで、やっと読了しました、ジョン・グレイ博士「ベスト・パートナーになるために」。

 それにしてもこの邦題、もうちょっとどーにかならなかったのかな。(^^;)
 訳者は、故・大島渚映画監督。
 たいへん読みやすい日本語で、さすがだなーと思いますが、この本のタイトルは編集のほうからの押し付けだよね? 絶対そうだよね? こういう言葉は大島監督のセンスじゃないよね? としつこいくらい言いたくなります。(^^;)

 内容の濃さに驚いてタイトルをほとんどみてなかったんですが、読後あらためて眺めて、
「たとえば電車の中で読んでいて、このタイトルを衆目にさらすというのはちょっとどころかすんごい恥ずかしいな」
 と思いました。

 本にカバーをつけていたのは、しおりが欲しかったから(カバーに紐しおりがついているので便利)であって、タイトルをさらすのが恥ずかしかったからではありませんが、でも、あらためてじっくり見ると、このタイトルはちょっとなー……。
 
 原題は MEN ARE FROM MARS WOMEN FROM VENUS (男は火星から、女は金星からやってきた)。
 まんまこのとおりの訳でよかったのに…。

 サリンジャーは自分の作品が外国で翻訳・出版されるときは、原題そのままを訳したタイトルにする、という項目を必ず契約の中にいれていたそうです。
 そのほうがいいのかもしれないな。
 ……といって、昨今の、外国映画のタイトルをただカタカナにしただけ、というのも、あんまり好きじゃないんですが。(^^;) ←ウルサイ

 この邦題ですと、この本がなにかのハウツー本みたいな印象になってしまう。でも、じっさいはそうではありません。

 ただのハウツー本なら、私はほとんどの場合、興味を持たない。とくに人間関係にかかわるそれは、小さいテクニックだけではたいして自分の日常に役に立つものではないので。
 まったく役に立たないとはいいませんが、人間関係ってその場その場、その人その人でぜんぜん違ってくるから、「応用」だけ聞いてもしょーない。

 本書の場合はハウツーではなく、ハウツーを言いつつも「なぜ、それが有効か」という、基本的な「大原則」を説いているところが特徴であり、「本題」なんですよね。

 数万件以上のカウンセリングから得られた、「人の心理」、その動き、原因、現象、結果、対応策……、通常のハウツー本は「現象」だけとらえて、それについてああしろこうしろというばかり。
 でも、同じ品種の花の苗でも、じっさいどうしたらいいかはじっさいの植えた場所によっても具体的なことは変わるので、——極端な話、隣の家と自宅の庭というだけでも生育環境は違う。
 ひとさまには有効でも自分に有効とはかぎらない、その小手先のことだけを真似たって花は咲かない。

 それより、品種の特徴と、環境のなにが適不適か、という、「おおもと」をちゃんと知っておけば、環境が変われば変わったように自分で工夫ができる。
 本書は、そういうことを説き起こしているんですよね。

 ということで。
 これまでには聞いたことがない、「根本にある大原則」を知ることは、私にはずいぶん衝撃でもあり、お話を聞けてよかった、としみじみ思うことでした。

 思うことは本当にいろいろありますが——本書の最後のほう、とくに興味深かったです。
 ずばり、「何が愛を“うとましさ”に変えてしまうのか」。

 人間関係ですから、問題が起きて大きな摩擦があって感情的にこじれていく、というのは、これはまあわかる。
 わからないのは、なにごともなく波風もなく、穏やかな日々なのに、「ある日、突然」「心変わり」が起きること。

 理由なんか(外見上は)まったくない。でもある朝、目が覚めたら、なぜか自分の中に「うとましい」気持ちが起きている。
 急に、不満をおぼえ、あるいは不安になり、あるいは相手に夢中になる理由がわからないと感じ、怒りを覚え、孤独感に襲われ、——突然過去のことを思い出して嫌悪感を覚える。

 そういうことはありませんか。

 自分でもなぜそうなるかわからない。たいていの場合は、目立つ理由もないから、ただ自分がちょっと不機嫌になっているだけ、あるいは「調子が悪い」だけだと思い、そのままやりすごせる程度のことだとはおもいますが。

 でもときどき、それがシャレにならない強さで襲ってくる。
 自分でも、もはや自分が(これという理由もなしに)心変わりしたのかとショックを受ける。

 でも、そうじゃないよ、と博士はおっしゃる。
 これはちゃんと説明できることだ、とも。

「私たちは激しい恋愛感情を持つと自動的に抑圧感が湧いてきて、一時的に愛の感覚が曇り、憂鬱になる。……
 だがこうした抑圧感はあなたを解放していやすために湧き起こってくるものだ」


「この種の感情は過去に自分が表現できずに密かに心の中にしまっておいたものである。
 それらが、ようやく表面に出てきても安全だと感じられるようになった時に突然、私たちの意識の中に堰を切ってあふれ出てくる」



 意識の奥に押し込められていた「傷」が、強い愛情を感じることで、もう外へ出ても安全だろうと感じて、出てこようとしている。外へ出て、傷を癒そうとする。
 そういう現象だ、ということですね。

 逆に言えばそれだけ、「安全」だと思えるし安心感、信頼感を覚えている、ということなんですが——、ただ、その「癒し」はやはりときに難しく、本来ならその愛情と信頼感のなかで癒されていくべきところ、そうはならず、かえって新たないさかいを生んで、関係の破綻を招き、さらに傷を作ることもある。

「同じことを何度でも繰り返してしまう」のは、そういうときなのかもしれません。
 人の心には「90 対 10 の法則」が働いている、とのこと。
 説明のつかない心の乱れの原因は、90%が過去に起因していて、現在のこと——相手とのやりとり、ちょっとした行き違い——は10%程度。

 大きな原因は過去(の傷)であり、相手に言われた一言は、原因ではなくただ「きっかけ」になっただけ、ということですね。

 だから自分がひどく不安定になり神経過敏になっているのは、目の前の相手が原因なのではなく、自分の過去が原因。
 
 であっても、その不安定や神経過敏の「被害」を被るのは、目の前の相手ということになるので、これはちょっと自覚しておく必要があるんでしょう。

 もちろんそれは、目の前の人に対しての信頼感があるからこそ、そろそろこれなんとかしたい、といって、癒されようとして傷がひょっこり顔を出しているだけですが、——なかなか、そういうことは悟れないし、わかっていても、やっぱり喧嘩にもなるでしょうね。

 だからやっぱりそこで他人に八つ当たりはしてはいかんので——ひとりで静かに、自分のその傷と向きあっていやす作業が必要。
 そのへんのことは、興味がおありでしたら本書を読んでいただきたく。
 ここでへんなふうに要約しても、それだけではまた「誤解」が生じかねないので。(^^;)

 そういった具合で。
 本書は、人の心理をやさしく丁寧にときほぐしては説明し、また、それについての「治療法」も、示してくれるもの。
 ゆえに、これはハウツー本、恋愛マニュアルではない——ということは、念を押しておきたい。

 結局は、抑圧や、心の傷と向き合う——という話になるわけですが、もうひとつ、ふだんはあまり聞かない話として「世代間の連鎖」がある。
 つまりは、親子、家族間で、同じような抑圧や心の傷をずーっと続けてしまうという問題。
 これも案外、見落とされがちで、でも重要なことではあります。

「本書を通して、あなたはおそらく両親が教えることができなかったことを数多く学んだはずである。彼らは、それを知らなかった。だが、あなたはいま、それを知っている。

 どうか、現実的になってもらいたい。自分の失敗にも寛容になるべきである。あなたがここで学んだ多くのことはすぐに忘れ去られてしまうかもしれない。

 ある教育理論によると、私たちが何か新しいことを習得するには、同じことを二百回繰り返して聞く必要があるという。
 私たちは、本書で学んだすべての新しい知識や知恵を一度に実行できることを自分に(あるいは相手に対して)期待してはならないのである。忍耐強く、そして段階を一歩ずつ踏んでいくことが大切だ」



 気が短いというのも、私の欠点のひとつですが、でも、「地図」になるものがあるというのは心強いこと。
 八つ当たりして他人に迷惑を(可能な限り;;)かけないよう、ひとり穴の中に閉じこもりつつ、ゆっくりでも癒していければいいな——と思います。
 
 
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タグ : 人間

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