正義を捨てるオススメ
 昨日11/15付け日経新聞の文化面、作家の吉村萬壱(よしむら・まんいち)さんの寄稿。

 いきなり専業作家になったのではなく、学校の先生をしてらしたそうで、それゆえにまた学校というものについてのお考えも面白いのですが、今回、目を引いたのは次のようなこと。

「人間が最も酷いことをするのは、「自分は正しい」と思い込んだときである。それは、正しくないものに対する徹底した非寛容になって現れる。加えて、「正しくなければならない」という過度の要求は強迫観念となって、自分自身を攻撃するだろう」



 その前日にはこちらのツイートも拝見しておりまして。



 申し合わせたように同じことを指摘していらっしゃる。

 私も、正義感はゴミ箱へ捨ててこい、というようになってしまいましたので——ああ、やっぱりそうなりますよねえ、と思わずしみじみしてしまいました。

 正義は正義でよろしいが、素手でドアノブに触れないように気をつけていて、ほんの少しでも触れようものなら、数時間も手を洗い続ける潔癖性のような勢いで「清潔であろう」とまでするのは、はっきりいってビョーキでしょう。
 さりながら、この病人の数は全体に多いため、病人は自分が病気だとは認めない。それが常識だと思ってる。

 こちらは、だから、その常識だの社会通念だの既成概念だのをそもそも疑え、といっているわけですから、話はかみ合いませんわね。(^^;)

 正義というのはあくまでも相対的な価値でしかなく、価値というよりも、「自分はこの立場をとる」とはっきりさせているだけのことなんですよね。
 利害というのはどうしたってあるわけなんで、可能な限り害を遠ざけ利を得ることはもちろん大事。自分や自分の大切な人を守るには必須のことではあります。
 
 ありますが、自分の利益は誰かの害、自分の害は誰かの利益というのも事実なんで、この相互の関係を認めない、というのが「絶対正義」の考え方。

 正義にも機能があるので全否定はしないが、それが絶対的価値だと思うとこうやって、人は道を踏み外すことになる。

 人間の大脳新皮質の、これが困ったところですが、「自分が悪い、ということはうっすら気がついているにもかかわらず、自分を守るためにそれを認めない」「認めないために、自分が悪いのではなく自分以外の何かを悪いことにする」——こういうことが得意なんですよね。人の脳は。

 ろくなことしないね全く——と私などは思いますが。

 正義という概念は、この現生人類の脳みそが作り出した、最高にして最低の「自己保身の概念」でしょうね。

 正義のためなら人を殺してもいい。どんな酷いことをしても許される。だってそれは正義だから。

 本来、人は、よりよく、より高度に、より美しく自分を生かしていこう、そういう人間になろうという向上心があるのですが、現実はなかなかそうではない。
 理想通りにはいかない自分に失望するあまり、現実の方をやがて歪めていくんですね。
 そのための便利な概念のひとつがこの正義ってやつなんでしょう。

 正義は人を殺す。正義は人を息苦しくさせる。他人のみならず自分自身へも容赦のない攻撃を繰り返させる。

 断言しますが、正義なんてもんはクソクラエですよ。本当にね。

 人間がこころ優しく、本来望むように美しく、豊かに生きるには、正義なんてそんなもんより大事なことがほかにいくらでもある。

 でも、正義はいいこと、正しいことはいいこと、というのが、現在の社会の常識であり社会通念です。

 正義なんかクソクラエだ、そんなもんゴミ箱へ捨ててこい、という言葉に遭遇したとき「怒り出す」人は、今回のテロリストと同じところにいますよ。自覚はなくてもです。
 
 吉村さんにしろ為末さんにしろ、そのあたりをやんわりやさしくお話になっているのですが……なかなか理解はされないようで。

 自分の持っている思い込み、既成概念を破壊する、その困難さを指摘したことへの「通じなさ」ときたらもう——見ている方が思わずそっと目頭を押さえてしまうほどです。(^^;)

 テロリストに対して「なぜこんなことをするのか」と憤る、その憤りは、テロリストと同じものですよなどと言っても、「通じない」ことが多いでしょうねそりゃ。

 正しいかどうかなんて、人生では大したことじゃないよ。そんなもんより大事なことがあるんだよ。と。

 イマドキ、悪と正義、黒と白の二元論なんかいうアホはいないだろうといいたいところですが……、一神教がいまだに、まだまだ幅を利かせているわけですから、「正義なんかクソだ」といったところで、理解されないどころか、言えば殺されるのが現状なんでしょうね。

 私はただ軽い思いつきで「正義感はゴミ箱へ」といっていたんですが、これは案外、思いの外——この21世紀においては大事なテーゼになっていくのかもしれない。
 
 そんなふうに思ったお話でした。
  
 
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