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「オタクに未来はあるのか!?」

オタクに未来はあるのか?!「巨大循環経済」の住人たちへ
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森永 卓郎 岡田 斗司夫


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 岡田斗司夫さんが、ダイエット本のおかげでひっぱりだこになり、そっちで忙しくなっちゃって、なかなか発行されなかった、森永卓郎さんとの共著「オタクと経済学」の本がようやく発行されたそうで。
 どれどれと買ってみたのですが、ご覧の通りの表紙だったので…いやはや。(^^;) 経済学なんていわれると、ちょっとおかたいイメージですが、こんな感じですか、表紙。

 中身ですが、岡田さんと森永さんの対談ですので、たいへんに読みやすいです。カタイ話もやわらかくできるというあたり、さすがですね。
 難しい話をやさしくする、というのは、本当に頭が良くて理解力がある人じゃないとできないこと。
 簡単なことをわざわざ難しくいうのが大好き、って人がいますが、あれはありがたくないですね。(^^;) 

 それにしても、結局、「オタクとはなにか」という定義は、やっぱり難しいんだなと再確認できたかんじ。
 「ジャンル」でいうならじつに多岐にわたっているし細分化もされちゃったし。
 オタクというものの「共通言語」になりえる、「代表作」というのは、エヴァを最後にもう10年、登場していない。ということは、この先も、そういうものは「もはや」登場し得ないのでは――という観測が語られます。
 これはオタクに限ったことじゃないですよね。アイドルであれ、なにかの歌であれ、「国民的」なんちゃら、というものが、登場しにくい世の中になっている。そういう「社会的傾向」は、オタクといえども無関係ではいられない。ということなんでしょうね。

 萌えという言葉の定義もじつのところは難しい、ということも途中で語られてしまいます……。オタクだの腐女子だの、それは個々人が勝手にもっているイメージに過ぎず、オタクはこうだ、腐女子はああだ、萌えとはあれだ、という、きっちりした定義があると思うのは「幻想」にすぎない、と私は考えておりますが……「やっぱり?」というところ。

 それにしても、「腐女子」論の本でもそうでしたが……どーしても、このお話って、「恋愛」の話が出てくるんですねえ。(^^;)
 どうなんですかねえ、私はそういう、現実と、二次元でもなんでも虚構の世界を混同しちゃった経験がないので、「二次元キャラでのみ、“恋愛”する」のがオタク、という認識が、果たして「正しい」のかどうか、判断できません。
 萌えがリビドーの一種であることを思えば、結果的にそうなっちゃう、もしくは他人からはそう見える、というのはあるだろうなーとは思いますけども……。うーん。

 にしても今回、いちばん、なるほど! と膝を打ったのは。
 実にさりげなく簡単なお話ですーっと通り過ぎてますが、ヴェルナー・ゾンバルトのお話。
 彼は「恋愛と放蕩が資本主義経済の本質」といったんだそうで。

 中世のヨーロッパの経済は爆発的に拡大するが、その起爆剤となったのは陶器、絹織物、鏡、宝飾品だった。なぜそういったものが起爆剤になりうるほど求められたのか。――それは貴族が、高等遊女を口説くときのネタだった、というのですね。
 つきつめると、女性の歓心を買うために、莫大なお金がつぎ込まれて、「研究開発」され、新製品がどんどん出てくる。これがのちの経済力の発達につながる。
 恋愛と放蕩こそが、経済の要だ、というお話。

 なるほどねー! と。マックス・ウェーバーなんぞより、そりゃ、はるかに説得力がありますね。高校の社会科では、ウェーバーより、ゾンバルトを紹介した方がわかりやすいんじゃない?
 後段で、森永さんの発言で、「新興の金持ちたちって、話題がインサイダー取引と節税と合コンと3つしかないんですよ(笑)」(135p)というのがあって、「なるほどね~」とさらに説得力が増す。

 オタクも、そろそろ、自分たちの仲間内だけの「循環型経済」で満足してないで、一般市場へ打って出よという話になりますが、しかし、――森永さんいわく、「金融業界では悪人でないとやっていけない面があ」るし、そういう意味ではオタクは「やさしくて遠慮深いので、生身の女性が無理だとわかると萌えに走っていくんですけど、金融市場で生きていく人っていうのは、ガンガン金稼いで、その札束でひっぱたいて言うこと聞かせて女性を自分のものにするっていうのが根底にあるんですね」――。
 ああ、ああいう奴ね……と、イメージできちゃうあたりが、なんとも。(^^;)

 まあ、難しいところでしょうねえ…、オタクの志向には、いわゆる職人気質(かたぎ)が多かれ少なかれ含まれて、それゆえにこそ、オタクの面白さが醸成されるのですが、この国においてさえ、その職人気質はときに経済観念とは衝突してきた歴史がある。
 まして、現代の「市場」というものは……; ねえ;;

 ほかにもいろいろ――「ネット住民はそのうち“スラム”化する」というような予測も、面白かったです。(基本的に森永さんはペシミストだな、とも思った……予測として間違っているという意味じゃないです。同じ事実でも、どういう側面から見るかで、明暗が違ったりするわけで、そういう意味で、ペシミストだなと)
 しかしいちばん、「あー、そーそーそー」と、うなずいていたのは、メイド喫茶について、成功するところとそうでないところの違いを分析しているなかでの、次の一節。

今の市場原理主義の人たちのいちばん悪いのはね、それら(成功の条件――立地・コンセプト・メイドの質)は均一なパーツだと思ってるんですよ。働く人を使い倒して、つぶれたらまた別のパーツを連れてきてパチッとはめれば、おんなじアウトプットが得られると思っているんですよ

 まさに。
 私が記憶する中では少なくとも、バブルのころから日本の経営者ってのはイカレた発言するおじさんのことでしたが、その傾向はバブル崩壊後さらにひどくなり、いま、「名ばかり管理職」はじめ、諸問題が吹き出している。その原因の最たるものですね。

 私はべつに左翼主義者じゃない(とんでもない!)。イカレてる人を、あいつイカレてるよ、と言える程度には、正気の人間のつもりでいます。(王様は裸だよ、って)

 オタクはじつは社会性が高い人々です、という発言が、本書中にもあるのですが、……なんだかそんなことを、あれこれ思い合わせて読んで楽しゅうございました。(^^)
 ただし、おすすめかどうかは何とも。
 自分の好みが、あんまり一般的じゃなさそうだ、というくらいの自覚はございます。(^^;)
 ひとまず、私には面白かった、ということで。
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